保険金請求権放棄
相続放棄は民法に規定されており、家庭裁判所に相続放棄の申述とその受理という手続きにより確定する。
ところが保険金請求権の放棄はその手続きが法定されていない。保険会社に放棄を述べたとしても、将来において事情が変わって意向を変更することもある。
債権者が差し押さえた場合、請求権の放棄の意思表示の仕方、その時期などに紛争が生じる。これらは保険金請求権放棄の手続きが法定されていないことによる。
◆最高裁h27-10-8 上告不受理 h27(受)1457
大阪高裁h27-4-23 h27(ネ)208
一審h26-12-16 神戸地裁尼崎支部h25(ワ)1048号
(事例:具体化した保険金請求権の放棄)
AはY生命と生命保険契約
被保険者はA
死亡保険金額 300万円
保険金受取人 「法定相続人」として指定した。
法定相続人は3人 X B C
□相続放棄 B C は相続放棄した。
相続放棄には債務超過以外にも様々な理由がある。相続した後の煩わしさを避けるなど。
□さらにBCは具体化した保険金請求権についても、「保険金を請求するつもりもなければ、譲渡するつもりもありません。そもそもこの件については一切関与するつもりもありません。」
□共同請求できない事情がある。XとBCとは絶縁状態。
論点:Xは、300万円全額を受け取れるか?
① BCは相続放棄しても、保険契約により保険金請求権はBCに発生する。
② 具体化した保険金請求権をBCが放棄した場合、その分が他の受取人Xに帰属するか?
答え:相続放棄は民法に規定されており、家庭裁判所に相続放棄の申述とその受理という手続きにより確定する。権利の存否は明確に確定する。
ところが保険金請求権の放棄となると、その手続きが法定されていない。保険会社に放棄を述べたとしても、将来において事情が変わって放棄者が意向を変更することもありうる。
債権者が差し押さえた場合、放棄された部分は消滅するのか? 消滅しないとしたら誰のものになるのか? 明確でない。請求権の放棄の意思表示の仕方、その時期などに紛争が生じる。これらは保険金請求権放棄の手続きが法定されていないことによる。
③ 放棄された部分は保険契約者の相続財産になるのか?
答えは前同様