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自殺免責

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自殺に関する各法律の給付補償金

 

自殺に関する各法律の給付補償金

(自殺の法律的な意味)

一般的に自殺という場合、死ぬことを予測計算して、周囲の環境も考えて、自殺行為を段取りするなどの意思決定能力を持つ。 統計によると自殺者総数の3割以上の者は精神疾患をその原因としているところ、精神疾患の程度が大きくなっていって心神喪失状態の程度に達すると、その者は死ぬことを予測計算することができない。このような程度に達した自死は法律的な意味での自殺ではない。 講学上の言い方をすると、「自殺とは自身の生命を絶つことを意識し、目的としてその生命を絶つことをいう。従って意思無能力者、精神障害による心神喪失者のように、生命を絶つことを意識しないで自死を敢行した場合には法律的には自殺ではない。」 意思能力の程度により、免責と補償との境界を図示してみると次のようになる。

 

 

各法律における自殺の取り扱い

(生命保険主契約の局面

□保険法51条一号 被保険者が自殺したとき、死亡保険契約の保険者は保険給付を行う責任を負わない。 生命保険においては、自殺について責任を負わないことが原則である。
□普通保険約款は、主契約の死亡保険金について支払い責任を負わない期間を制限しており、例えば「3年以内の自殺には死亡保険金をしはらわない」と規定して免責事由にしている。 この制限期間を超えた自殺については主契約の死亡保険金険は支払われる。
問題:制限期間内の自殺について、死亡保険金は支払われるか?
答え:制限期間内の自殺について死亡保険金は支払われた例は極めて稀である。
保険金が支払われるためには法律的意味において自殺に該当しないことが必要であり、「自由な意思決定ができない状態」が要件である。 意思能力の程度は「法律行為における意思能力の欠如と同じ程度」であり、 例えば、錯乱状態になり高所から飛び降りれば死亡するということさえも理解できない状態、死を認識していない状態、精神疾患による強度の幻覚症状がある状態、心神喪失状態など実際例として極めて稀な事案でしかない。

(傷害保険の局面)
災害死亡給付特約による災害死亡保険金
要件:不慮の事故「急激、偶発、外来の事故で、かつ死因分類提要の項目中の指定されたもの」
免責事由:□被保険者の故意
□被保険者の精神障害を原因とする事故
>従って争点は、免責事由となる。
□故意:通常の自殺は故意があるから故意免責となる。
「自由な意思決定ができない状態」における自殺の場合には、故意とはいえないので故意免責ではない。
□「精神障害を原因とする事故」か?否か?
(事例:精神分裂病による心神喪失状態において、橋の上から飛び降りて死亡した事案)
後記 大阪地裁h11-9-28 参照

(地方公務員の場合)
地方公務員災害補償法に基づく次の基準により審査される。
「精神疾患等の公務災害の認定について」 h24年3月16日地基補第61号
□ 自殺の取り扱い 公務  →  精神疾患  →  自殺
相当因果関係     相当因果関係
>公務と精神疾患との因果関係について: 精神疾患発症前の6カ月間において、業務による強度の精神的負荷が認められること又は公務外疾患悪化の公務起因性
>精神疾患と自殺との因果関係について ICD-10のF0~F4までに分類される多くの精神疾患は自殺念慮が出現する蓋然性が高いと医学的に認められている。それゆえ、ICD10のF0からF4までの精神疾患では②の因果関係が推定される。

(国家公務員の場合)

国家公務員災害補償法に基づく次の基準により審査される。
「精神疾患等の公務災害の認定について」最終改正h24年3月26日職補―95
□ 自殺の取り扱いについては、概ね地方公務員の場合と同様である。


(労災法:労働者災害補償保険法)


労災法第12条の2の2
「労働者が、故意に死亡又はその直接の原因となった事故を生じさせたときは、政府は、保険給付を行わない。」    ・・・故意免責規定 しかし、精神障害が著しい場合に行われた自死は故意には該当しないとして補償される。該当するかしないかは次の基準に基づいて審査される。
「心理的負荷による精神障害の認定基準」 基発1226第1号
平成23年12月26日
判断枠組としては、業務に起因して精神障害を発症して自殺する経過が診査される。
業務  →  精神障害  →  自殺
業務に起因する精神障害であるかどうかは、心理的負荷の強度の判断であるが、 基準の「別表1 業務による心理的負荷評価表」に沿って判断される。
精神障害による自殺については、基準の第8その他の項目に、□自殺について と題して、次のように記載されている。
「業務によりICD-10のF0~F4までに分類される精神障害を発病した者が自殺を図った場合には、精神障害によって正常の認識、後遺選択能力が著しく阻害され、あるいは自殺行為を思いとどまる精神的抑制力が著しく阻害されている状態に陥ったものと推定し、業務起因性を認める。」
労災による自殺の補償は、保険法における補償よりも補償される範囲は広い。
労災により補償された事例でも、保険法に基づいて死亡保険金を請求しても認容された例は非常に少ない。

(日本における自殺の統計)

2015年、G8国について、世界保健機関による自殺率を調べてみると
人口10万人当たり
ロシア     20.1人
日本      19.7
フランス    16.9
アメリカ    14.3
ドイツ     13.3
カナダ     12.3
イギリス     8.5
イタリア     7.9

警察庁「自殺統計」をみると、
平成27年において日本の自殺者総数は    24,025人
原因動機別自殺者数は、
健康問題        12,145 50%
経済・生活問題     4,082
家庭問題      3,641
勤務問題      2,159
健康問題のうち、精神疾患(うつ病、統合失調症、アルコール依存症、薬物乱用、その他精神疾患)の数は7,754人であり、
自殺者総数24,025人の32%に達する。
自殺予防活動としての検索サイトとして、http://shienjoho.go.jp/
www.mhlw.go.jp/ などが設けられている。

(事例:精神分裂病による心神喪失状態において、橋の上から飛び降りて死亡した事案 大阪地裁h11-9-28)

□本件契約1 

保険契約締結日  h8-7-1   

契約者 被保険者 A  

死亡保険金受取人 X1(父親)

     保険種類  定期保険特約付終身保険

保険金額 (1)主契約      200万円

          (2)定期保険特約  1800万円  

          (3)特定疾病保障定期保険特約  1000万円

          (4)傷害特約     500万円

          (5)災害割り増し特約 500万円

  (1)ないし(3)については、1年以内の自殺は支払わない。

   (4),(5)の特約保険金は、不慮の事故により死亡した場合に支払う。

□本件契約2

     保険契約締結日  h3-10-1  

    契約者 被保険者 A  

死亡保険金受取人X1(父親)

     保険種類 終身保険 

  保険金額 (1)主契約      150万円

          (2)定期保険特約  2850万円  

          (3)災害割増特約   800万円

(4)傷害特約     700万円

     (3)(4)については、不慮の事故による死亡の場合に支払う。

□A 生年月日 s42-6-1 

□h8-10-28(29歳4カ月):自宅付近の水路に転落して死亡

□事故直前の行動

内科、心療内科の受診:

今胸が痛くなった。

声が聞こえる。献体をしなさいと言っている。幻聴

ドライブから帰って、突然自宅西側の道路を府道202号線の方に走り始めた。  行き先不明。警察に捜索願

午後10時ころ 水路で発見

□傷害前6カ月位前からの精神状態

h8-10-14 沖縄県那覇市 日帰り出張

25日 「やくざに追いかけられている」やくざと交友関係はないのに

逃げろ 幻聴

パトカーで捜索  港警察で保護

16日ころからズキッとくる腰痛が繰り返し起きる

N医師は、精神分裂病の疾患の可能性を指摘している。

□精神障害の治療歴  なし  

 

(問題)契約1、契約2の各費目保険金について、支払いの可能性を問う。

(答え)本契約1については、通常の自殺であれば1年以内になるから(1)ないし(3)は免責になるが、本件は心神喪失状態での自死であるから法律的意味の自殺ではなく、これらは支払われる。
(4)(5)については、精神分裂病による心神喪失状態における自死であるから、故意免責ではなくて、「精神障害を原因とする事故」免責となる。
本契約2の(1)(2)は制限期間を経過しており、通常の自殺であっても支払われる。
(3)(4)は精神分裂病による心神喪失状態における自死であるから、故意免責ではなくて、「精神障害を原因とする事故」免責となる。

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